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環境保全で経済再生を ~日本版グリーンニューディール政策

 ここ数年、石川県では自然災害が続発した。一昨年、一時間の雨量138ミリという空前のゲリラ豪雨が発生し、金沢の町並みが泥の海と化した。これが地球温暖化に伴うものか即断できないが、私たちの身辺でも気候が「凶暴化」している印象は否めない。その前年には能登半島地震が発生し、今も傷跡は癒えきっていない。日ごろの災害対策がいかに重要か、肌身で感じる出来事が続いたわけである。

 民主党政権となり、鳩山由紀夫首相は「コンクリートから人へ」「命を守りたい」と連呼し、本年度予算では実に前年度比18・3%の公共事業を削減した。しかし、人の命を救うためにコンクリートが必要ないかと言えば、決してそうは言えまい。私はむしろ治山治水など「命の公共事業」はどんどん積極的に行うべきであり、それが景気・雇用対策を兼ねた「日本版グリーンニューディール政策」として日本経済の浮揚に一役買い、とりわけ地方の疲弊を救うことになると考えている。

 環境保全と災害対策に重点を置いた公共投資を行うことを現政権に強く迫りたいし、すみやかに政権を奪回し、我々の手で実現したいものである。

 以前、東京大学名誉教授の月尾嘉男氏と対談したとき、月尾氏は「日本が自給できる資源はたった二つ、水と人間だけ」と語った。確かに、日本は世界的に見て水に困らない国であろう。しかし、将来的には水の安全保障ということも考えねばなるまい。

  たとえば、いま中国は日本の森林をどんどん買収しようとしている。すさまじい経済成長を遂げた半面、砂漠化が進行する中国が日本の森林を買おうとする目的の一つは樹木そのものだが、いま一つは森林の下に眠る水資源である。こうした外国の動きに対して日本には何ら法律的規制もない。

 そして、水の安全保障は食糧安全保障に深く関連する。いま日本の食糧自給率は40%に満たないが、自給率を上げようとすればより多くの水が必要になることは自明である。中国は世界中の穀物をも押さえようとしており、いつまでも日本が輸入できるとは限らない。日本が食糧の完全自給を達成しようとすれば、今の倍の水資源が必要になり、決して日本にも水が余っているわけではないのである。

 民主党は「ムダなダム」というスローガンを唱えてきたが、むろん一概にそうとは言えない。それは彼らも目標とする食糧自給と矛盾する。月尾氏によると、いま日本には約3000のダムがあるが、そこに貯められた水をすべて合計しても、アメリカのコロラド川に1929年に建設されたフーバーダムの貯水量の半分に過ぎない。日本の食糧自給率を高めようとすれば、効果的な利水ダムがもっと必要になる。

 現政権は「八ッ場ダム」など全国のダム計画を見直すという方針だが、私は水の安全保障、食糧安全保障という長期的視野に立って必要なダムの整備は進めるべきだと考える。これもグリーンニューディールの一形態である。

 ただ、適切なダムの整備と同時に、山林の再生による水資源の確保も重要であり、戦後盛んに植えられた針葉樹に代わって保水力の大きな広葉樹に植え替えることも考えねばならないだろう。地方でも林業後継者が少なく、山林の荒廃が進んでいるが、これも環境保全型の公共事業として間伐など山林の再生を進めることが必要である。これが就業機会の増大につながるよう、教育訓練を含めた仕組み作りを考えていきたい。

 気象庁が予測した百年後の降雪量のデータによると、北陸、東北、北海道では雪が大幅に減るとされる。森林が「緑のダム」なら、雪は「白いダム」と言って良い。梅雨が始まるまで雨の少ない時期に田畑を潤してくれるのは雪解け水の賜物だ。その雪が減っていくと、日本の農業はどうなるのか。国の水資源担当者はそこまで考えていないのではないか。

 ここまで述べて来たように、環境保全や災害対策を重点とする公共事業から一次産業の再生まで幅広い「日本版グリーンニューディール政策」を提唱したい。これは自然環境を守り、同時に日本経済を再生させる一石二鳥の政策である。

 更には、交通体系を考えても、環境面で優れた交通手段と言える新幹線など高速鉄道ネットワークを全国的に完成させ、これを海外にまで売り込むことは、環境保全と経済活性化に寄与することは明らかである。

 また水質浄化のように日本が得意とする環境技術を、公害に悩む中国に提供する環境ビジネスは、日本の成長戦略として不可欠であり、この方面に対する研究開発に国は投資を惜しむべきではない。

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